精度評価における概念と用語
顔認証に限らず生体認証には様々な専門用語が飛び交います。今回も「よく分かる生体認証 一般社団法人日本自動認識システム協会編 オーム社」からこの概念と用語についてピックアップしてみましょう。個人的な評価も入っておりますので正確には原著をご参考にしてください。
- クレーム ( claim )
システムへの認証要求のこと。新規登録やデータ照会要求のこと。 - 1対1比較, 1対多比較
1対1比較 ( one-to-one comparison ) による照合を「認証」( verification ) 、反対に1対多比較を「識別」( identification ) と言います。顔においては「顔検出」「顔認識」「顔認証」など様々な呼び方がありますが、これら概念とは違います。 - 識別 ( identification )と認証 ( veritication )
識別:主に法執行機関が用います。例えば警察が用いる指紋照合 (AFIS : automated fingerprint identification system ) では
本人拒否率 > 他人受入率
としています。これは顔認証にも言えることで、どのような目的で使用するかによってこのように条件を変えることが重要と考えます。
認証:提示されたユーザ名が本当にその人のものであるかを確認すること。 - ボナ・フィデ ( bona-fide )
「期待されている使い方」を指します。「悪意を持った意図的な不正」の対義語で使われることが多いようです。 - 偽陽性 ( false positive )
識別処理の場合、照会者の生体データはデータベースにないはずなのに誤って「登録済み」と値が返される場合などに用いられます。 - 偽陰性 ( false negative )
すでにデータベースに登録されている生体データに対して「登録なし」と値を返す場合に用いられます。 - 誤合致率 ( FMR: false match rate )
FMR は照合データと一致しない登録データとの比較にも関わらず、誤って同一人物と判定される比率のこと。
顔認証における「積極認証」と「非積極認証」の場合、非積極認証における FMR は高くなる傾向にあります。 - 誤非合致率 ( FNMR : false non-match rate )
同一人物の登録データと照会データとの比較であるにも関わらず、他人同士のデータであると誤って判定される比率のこと
この場合も非積極認証の場合が率としては高くなる - 誤受入率 ( FAR : false acceptance rate )
誤ってクレームを受け入れてしまうエラーの発生率のこと。例えば生体認証の場合ですでに登録があるにも関わらず新規登録を受けてしまうこと。他人受入率とおなじ - 誤拒否率 ( FRR : false rejection rate )
誤ってクレームを拒否してしまうエラーの発生率。データベースには登録してある人物であるにも関わらず「未登録である」と値を返してしまう率のこと。「本人拒否率」とおなじ - 分類 ( classification )
称号をする際に予め複数のグループに分類しておき、実際の照合をする時に処理時間を短くする目的のもの。顔認証においては、最初に「男か女か」を判別するとその後の処理速度は理屈では倍になる。 - 属性 ( attribute, demographic )
顔画像であれば、男か女か、何歳くらいであるかなどを示す
同じ論文の和訳であっても FAR や FRR はよく出てくる単語であるけれども、例えば「誤拒否率」とするのか「本人拒否率」と和訳するのかで意味合いが多少変わってくるのかも知れないですね。