顔認証技術の今後の動向(1)

ユーザビリティに優れる顔認証技術は、認証制度の大幅な向上に支えられて大きく広がろうとしています。今後は大きく2つの方向に進化すると考えられています。

  1. リソースを最大限使った高精度な顔認証(強い顔認証
    ディープラーニングの研究開発進展に歩調を合わせて、より高い認識精度を求め、コンピュータのリソースを最大限に活かしてひじょうに多くの特徴量を詳細に識別することにより、顔向きや照明変化により強い高精度な顔認証が研究・開発されています。入出国審査や犯罪捜査などで応用が進みつつあり、以前にもまして精度向上への期待が寄せられています。
  2. 様々な機器に組み込まれる小型・高速な組み込み顔認証(弱い顔認証
    その人に最適な機能・インターフェース・情報を提供するようなユーザビリティの向上を求めて、身の回りの様々な機器に顔認証が搭載されて、ユーザを認識することが今後求められてきます。
    そのためには様々な機器に組み込める小型・高速性と人の自然な行動のもとでも認識可能(非積極認証)な耐環境性が求められます。限られたリソース・速度の中であっても、ディープラーニング技術を適応することで最大限の精度を実現する小型・高速化の実装技術も進展しており実用化に向かっています。
  • 強い顔認証とは大規模顔認証システムのこと
  • 弱い顔認証とは中小規模顔認証システムのこと

顔認証技術の応用事例

 下の図のように、セキュリティやデジタル画像機器、エンターテイメントなどの市場において、顔認証技術の実環境下での利用が大きく広がりつつあります。

IOT社会における顔認証技術の応用
IOT社会における顔認証技術の応用
スマートフォン向け顔認証
スマートフォン向け顔認証
  • セキュリティ機器での応用事例
    ユーザが顔を合わせるタイプ(積極認証・Cooperative
    入退室管理システム:オフィスやビルなどにおいて、登録されている人があれば顔を見せるだけでドアの電子錠が開くという便利なシステム。静止型(積極認証型)とウォークスルー型(非積極認証型)があります。
    ICカード個人認証:ICカードに顔特徴量データを記録しておき、使用時に所有者かどうか確認するため、パスワード+本人の顔尾で確認するシステム。
    ユーザの無意識下で認証する監視顔認証(非積極認証・Non-Cooperative
     監視顔認証:国際的なテロ事件の続発を受けて、いくつかの国では空港などの重要施設において入国時に監視カメラなどで国際犯罪者の顔を探索することが開始されていると言われています。
    老人福祉施設などにおける監視顔認証:老人福祉施設や老人保健施設などの出口で、出ていく人の顔を認証し、徘徊癖のある人が出ていく時、介護者に通報を行い安全に付き添うことをサポートするシステム。
    該当などにおける監視顔認証:中国では、該当の防犯カメラの映像から顔認証を行い、犯罪者の可能性のある顔画像をオペレータに提示するシステムが稼働していると言われています。
  • デジタル画像機器での応用事例
    顔探索
    デジタルカメラやスマートフォン撮影画像からの顔探索:これら機器の普及に伴い、PCなどのストレージに静止画像が蓄積されやすくなっています。例えば google photo では人物ごとによるアルバムの作成を自動的に行い家族写真などを検索する場合に大いに役立っています。
    スマートフォンによる顔認証:スマートフォンには電話帳やメールだけでなく、画像・映像や財布、定期券など多機能化により多くの個人情報が搭載されてきています。それらを守るのは従来の4桁パスワードだけでしたが、近年高機能化により指紋認証や顔認証を併用するように変化しつつあります。
  • エンターテイメントなどでの応用事例
    接客対応ロボット
    従来の総合案内と異なり人ではなくロボットが来客者のご案内をするシステムが普及しつつあります
    顔で遊ぶコンテンツサービス
    スマートフォンの普及に伴い、顔画像を撮影して遊ぶコンテンツが流行しています。人相占いや有名人の顔に似ているかをチェックするコンテンツ、友人との顔を変換して遊ぶサービスもあります。

一般社団法人日本自動認識システム協会
オーム社「よく分かる生体認証」p.36-37参照