社会が一気に走り出したときの備え
スマートフォンでは顔認証によるロック解除が当たり前になりました。フェイスブックや google フォトでは同一人物ごとにカテゴライズしてとても見やすくなっています。
ですが、いずれも海外の技術。日本発のサービスではありません。
お隣中国では顔認証によるクーポン利用などで消費者が恩恵を受けています。
顔認証決済にはどのようなメリットがあるのだろうか? セブンイレブン華南地区の徐勝利副総経理は中国メディアの取材に次のように答えている。同社は顔認証決済をまずは2店舗で1カ月間試し、その後50店舗に拡大してさらに1カ月テストを続けた。その結果、「短期間で利用者が急増した」「他の決済方式と比べて、支払いの効率が20~50%向上する」「会員登録やクーポン利用が5~6倍に増えた」などの絶大な効果が上がったとして、全店舗への導入を決めたという。
GEMBA, なぜ日本では顔認証技術の社会実装が進まないのか?――現代中国・イノベーションの最前線
では、日本は顔認証における技術を持っていないか・・と言われると、答えは NO です。NEC を筆頭として数多くのパテントを持っていますし、技術的すそ野も広いと言えます。
しかしながら、日本は中国のように顔認証システムが社会にまだ浸透していません。
なぜなのか?
この質問に対してよく使われるのが、「中国にはプライバシーの概念がないからだ」というフレーズです。たしかに国家主体の監視カメラシステム「天網」があります。このシステムのおかげで「犯人が 7 分で捕まる」ということもあるそうです。
天網とは中華人民共和国本土(大陸地区)において実施されている AI を用いた監視カメラを中心とするコンピュータネットワークである。
天網
(中略)
2020年までの中国全土の導入を目指している。
しかしながら、中国国内においても民間企業に対してのプライバシー保護の高まりがあり、例えば個人情報流出などは社会的に許されない流れになっています。
2017年にはIT企業の奇虎360(チーフー サンロクマル)が運営する水滴直播平台(水滴ストリーミング・プラットフォーム)が閉鎖された。これは、自分が設置した監視カメラ映像を遠隔地から簡単に閲覧できるというサービスで、離れた場所に住む親が倒れていないか子どもがチェックする、学校の教室風景を流して保護者がチェックする、オフィスや店舗の状況を経営者が監視するという使い方が多かった。ところが適切なアクセス権限が設定されておらず、中国各地の学校、住宅、オフィスが衆目にさらされていると話題になり、奇虎360はサービス閉鎖を決めた。
GEMBA, なぜ日本では顔認証技術の社会実装が進まないのか?――現代中国・イノベーションの最前線
ですので、「中国にはプライバシーの概念がないから」は、少なくとも民間企業に対しては全く間違いなことがわかります。
思うに、日本独特のビジネスのやり方・作法の類になるかと思いますが、
「十分に社会に広まったらウチもやろう」
「その時は出遅れないように注視だけはしておこう」
という事に尽きるかと思われます。
問題は供給側です。
もし、「日本では顔認証は流行らなそうだ」あるいは、「ウチは関係ないだろう」とタカをくくっていると、爆発的に広まるビジネスチャンスを逃すことになります。また、これも「恐らく」ですが、一旦広まるとその後の参入チャンスは非常に難しいことになるでしょう。裏を返せば、初動作に成功すればしばらくは安泰だという事になります。
日本ではいつその時が来るかどうか誰にもわかりません。あるビジネス批評家は「オリンピックが契機となる」と言っていますが、本当にそうかわかりません。
確実に言えることは、「ある瞬間、爆発的に需要が伸びる」ということです。
「その時」に対して供給側の備えがあるかどうか、心配されるところです。